有田焼の技術で、世界基準のスタンダードな食器を《1616 / arita japan》
「有田焼に新しい風を」という想いのもと生まれたブランド、「1616 / arita japan(イチロクイチロク / アリタジャパン)」。
花色百貨でもコーヒーカップ&ソーサーを取り扱っている「S&Bカラーポーセリンシリーズ」の他にも、コレクションごとに異なるデザイナーとコラボレーションを続けています。
ブランドを立ち上げた「百田陶園」ブランドマネージャーの百田さんに、今までにない技巧を凝らしたデザイン性の高いアイテムに込められたストーリーをお聞きしました。
ー 2022年に10周年を迎える「1616 / arita japan」、ブランド立ち上げのきっかけは?
大きなきっかけは、パレスホテル東京からのお声がけでした。2012年のパレスホテル東京リニューアルオープンに合わせて、弊社商品をお取扱いいただけることになりました。
それを機に「新しい有田焼」を見せることができないかということで、新ブランドを立ち上げることに。本当に、とてもいいきっかけをいただきました。
その際、クリエイティブディレクターとして入っていただいたのがデザイナーの柳原 照弘(やなぎはら てるひろ)さんです。
柳原さんからは「今までのものではなく、10年、20年、50年とずっと使ってもらえる世界基準の陶磁器ブランドをつくりましょう」とご提案いただき、世界基準のスタンダードな食器づくりを目指す「1616 / arita japan」がスタートしました。
その後、様々なデザイナーを迎え、デザイナーごとに新たなシリーズを発表しています。
ー シリーズごとに異なる個性やコンセプトは、各デザイナーにお任せしているのですか?
そうなんです。デザイナーには「世界基準のスタンダードな食器をつくる」ということだけ伝えて、コレクションの内容に関してはすべてお任せしています。
国ごとの違いやデザイナーの個性が存分に発揮されて、シリーズごとのストーリーやコンセプトがしっかり見える形になっていると思います。
ー 花色百貨でもお取り扱いしているS&Bシリーズのこだわりは?
「S&Bシリーズ」の最大の特徴は、この淡くて美しいパステルカラーです。
「S&Bシリーズ」誕生のきっかけは、当時オランダで頭角を現していた若手デザイナーユニット「ショルテン&バーイングス」との出会いでした。
オランダをはじめ、ヨーロッパでは陶磁器にパステルカラーがよく使われます。
そのパステルカラーを、有田焼特有の淡くて儚い色づかいで表現できるのではということで、クリエイティブディレクターの柳原さんにご紹介いただき、彼らにオファーしたのです。
淡いピンクにビビッドなイエローの組み合わせなど海外デザイナーならではの色使いと、やわらかさや淡さを感じる有田焼の伝統的な色合いが組み合わさることで、ヨーロッパでも受け入れやすいパステルカラーのコレクションに仕上がりました。
ー「世界基準のスタンダード」というコンセプトの表現には、苦労も多かったのでは?
提示されたデザインをどう再現するか、有田の職人たちとともにとにかく集中して取り組みました。
「S&Bシリーズ」のコーヒーカップ&ソーサーもそうなのですが、釉薬がかかったツヤのある面と、マットな面があるのがわかりますか?
今ではずいぶん一般的になってきましたが、釉薬をかけずにマットな状態に仕上げるというのは当時では本当に考えられなかったこと。
厚みも、2~3mmくらいのとにかく薄いデザインが上がってくるので、職人も「デザイナーは本当に焼き物がわかっているのかな」という話から始まって(笑)
ー 手に持ったときの軽さや薄さには、驚きました!
一般的な製法では本当にありえないデザインと薄さでした。まずは頭をまっさらにして、どうやったらつくれるかと考え直すところからスタートしました。
ストレートな形状もそうです。焼き物って動きながら収縮していくので、ストレート形状をつくるのが難しいんです。
フラットな形状にするために最初から変形させたり、検証を繰り返しました。
多くの課題をひとつずつ検証しながら、1年という短い期間でデザインを再現し、これだけのクオリティで焼き上げられたのは、本当に職人の技術の賜物です。
コーヒーカップのハンドル部分も特徴的で、一般的な指を入れる形状ではなく、このハンドルはほとんど板のような形です。
一見持ちにくそうですが、コーヒーカップ自体が薄くてとても軽いので、負担にならないんです。
コレクションを発表した2012年には、世界最大のデザインイベントであるミラノ・サローネに出展。テーブルウェア部門でアワードをいただき、世界のメディアにも取り上げていただいて、すごいスピードで世界にも認めてもらえたと思っています。
ー どんな方に使っていただきたいですか?
どの年齢層の方にも使っていただきたいですね。
有田にある店舗や取引先にお聞きしても、メインは20代後半~30代のお客様が多いと聞きますが、50~60代、それ以上の方にもご来店いただいています。
最近は男性のお客様も増えていて、年齢や性別に関係なくお使いいただけていることを実感します。
ー最後に、メッセージをお願いします!
S&Bシリーズなどをきっかけに「有田焼の今」に興味を持っていただけたら、ぜひ一度私たちのリアル店舗にも遊びに来ていただけたら嬉しいです。
これからも挑戦を続けていきますので、ぜひご期待ください。
世界で活躍するデザイナーとのコラボレーションから生まれた「1616 / arita japan」のアイテム。
400年以上続く有田焼へのリスペクトが込められたプロダクトの数々は、デザイナーのこだわりと有田の職人技が合わさってはじめて完成するものなのだと教えていただきました。
2021年には4シリーズ目のコレクションも発表し、今後の展開も見逃せません。ありがとうございました!
PROFILE | 株式会社百田陶園
1616年、日本で最初に陶磁器がつくられたとされる佐賀県・有田。その地で有田の窯元とものづくりを続けている有田焼の総合商社。
2012年、新たな陶磁器ブランド「1616 / arita japan」を立ち上げ。1616年からの記憶を引き継ぐように名付けられた同ブランドは、有田焼の伝統を踏襲しながらもこれまでの有田焼とは異なるデザインアプローチを試みている。